政策の効果をどう測ればいいのかー公共施設の再編を例にー

今日は政策の効果の測り方の1つを紹介したいと思います。

 

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今回紹介するのが差分の差法と呼ばれる方法です。

名前を聞いて難しそうだとビビることなかれ、です。

その名前の割に発想的には簡単です。

 

例えば

「公共施設を再編して、支出(歳出)を減らす」というのを政策の目的としましょう。

そうだとすると、再編を実施する前と実施した後で減っていればいいはずです。

画像の表に注目してください。政策の実施の有無(ここでは再編の有無)のところです。再編を実施した自治体と実施していない自治体どちらも支出は減っているようです。

再編の効果があったような、なかったような・・・

これではまだわからないというのが、実のところですよね。

 

そうすると、次に比較したくなるのが、同じような自治体(人口や面積が似ているなど)で再編した自治体と再編していない自治体どちらが、より運営費が抑えられている*1かどうかが重要になってきます。

 

そうすると、びっくりすることに、再編していない自治体の方が、再編した自治体よりも運営費が低く運営できていることになっています。

 

そして、これを通常の計量分析(OLSなど)に乗せてしまうと、政策を実施しないほうが賢いといった結論になってしまいます。

それでは、本当に再編はしないほうがよかったのでしょうか?

 

実はこれは、政策効果を見誤っています。

 

というのも、政策目的に照らし合わせて、重要になるのはどれだけ減らせたかです。

前後の比較をしてみると、再編した自治体は80コストを削減しています。その一方で、再編を実施していない自治体は、50コストの削減をしています。

 

どちらも、削減効果があったとはいえ、公共施設を再編した自治体の方が、再編していない自治体よりも、多く削減に務めています。

 

それでは、肝心の公共施設を再編した効果はどれだけかというと・・・

 

30(=80−50)ということになります。

 

何もしなくても、「何かしらのトレンド」で50は減る。ただ、それ以上に再編を進めることによって、30より多く削減に務めることができるといった具合となります。

 

 

実施前と実施後の差分をとってさらに実施した自治体と実施していない自治体の差分をとる。だから、名前が差分の差法と呼ばれるんです。

 

現在では、差分の差法を使った実証分析も増えています。今回では紹介しませんが、こういったアイディアで考えているんだなと思っておいただければ幸いです。

また、実は、実証分析を行うにあたっても、非常に簡単というのもこの分析のメリットです。

 

 

それでは、今回は政策の効果の測り方を公共施設の再編を使って説明してみました。

差分の差法は、そのうちの最も簡単な発想でできるものです。シンプルで適切な政策評価が求められている現代では、非常に有用な方法ですのでぜひ試してみてください。

*1:ここでは「不当に」コストを抑えるということは想定していません。必要なクオリティを保っていることが前提です。